幼馴染みの秘めた溺愛  ~お前は女神でヒーローで
残りのチューハイをグビグビっと呷り、空の缶をちゃぶ台に置くと、樹王が私の隣に来た。

「…何?」

「なぁ、俺としてみるか?」

「…何を?」

「セックス」


…はい?

樹王を直視したまま思考回路ごと固まっていると、唇に柔らかい感触を受けた。


…キス、されて、る?


唇が離れてもまだ呆然としていると、肩を掴まれ、優しく床に倒された。

仰向けの私の真上に…〝男〞の顔した樹王…

「美桜、ずっと男いなくてご無沙汰だろ?…満足させる自信ならあるけど」

樹王が私に馬乗りになる格好で、私の手に指を絡めて床に押さえ付けている。


え、…な…に……?

見たことのない〝男〞の顔をした樹王に胸が痛いくらいドキドキする反面、こんなのは初めてのことで…怖くて動けなかった。


…けど、少しの時間が経ち、漸く口が動いた。

「っ…バカにしないでよ!そこらの女と一緒にしないで!」

すると、少し大きな声を出したからか、ケフッと小さくげっぷが出た。


「はは、このシチュエーションでげっぷとか、男を萎えさせる天才か」

そう笑って樹王は私にデコピンし、手を解放した。


「痛っ…仕方ないでしょ!生理現象なんだから!…っていうか、そもそも樹王が…」

「ハイハイこの話はおしまい。じゃ、茶碗片付けるぞ」

樹王は私から離れると、何事も無かったかの様にお盆に食器を乗せていく。

テキパキと手際よく片付ける樹王を見て、我に返った私もそれに倣った。


「早いとこ片付けて仕事の続きしよ」

「なんだ、仕事あるなら後は俺がやっとくよ」

「え、いいよ。それくらいの時間はあるし」

「いーから俺に甘えとけ」

「でも」

「…そんな時間があるなら、さっきの続きするか?」

は!?

「いえ!じゃあ仕事してきます!食器洗い、お願いします!」

ベコリっ!て音がしそうなくらい頭を下げると、バタバタと部屋に戻った。


…1人になると一気に気が抜けてしまい、カーペットにヘナヘナペタリと腰を下ろした。

そして…ドキドキとうるさい心臓を押さえ…唇に指で触れる。


樹王とキス…しちゃった…


私を押し倒したのも…あれって…私を女として…みてくれたってことかな…

…だったら…嬉しいな…
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