さよならの続き
「自分に嘘をついて、たくさん傷つけてごめん。ペースメーカーをつける前に言っておきたい。俺は常に死を意識して生きる生活から解放される。だから…」

じわりと涙が浮かぶ。
そんな私を見て、まだ早いよ、と航平は苦笑いをする。

「これからもずっと一緒に生きていこう。航太の成長を見守りながら、一緒に歳を重ねていこう」

「うん」

溢れた一筋の嬉し涙を航平が指ですくい、やさしいキスをくれる。

「ママー!パパー!」

航太が目を輝かせながら走ってやって来る。

「これはママの」
 
航太が私の手のひらに乗せてくれたのは、さっき航平がもらったピンク色の貝と同じものだ。

「航太の分はいいの?」
「いいの。パパとママの、おんなじのさがしたの」
「そうなの?ありがとう」

へへっと航太は誇らしげに笑う。
砂だらけの手で鼻の下を拭ったんだろう。
髭みたいになっている。

「ねえパパー」

航平の太腿を揺らして、甘えた声で抱っこを催促する。
航平はそれに応えて、航太を軽々と抱っこして立ち上がる。
航太は嬉しそうにまたキャハハッと笑う。

「有梨、航太に兄弟作ってやろうか。ひとりと言わず、2人でも3人でも」
「うん、そうだね」

私たちは、命ある限り寄り添って共に生きていく。
たくさんの愛を紡ぎながら。

「有梨、いつかのプロポーズ覚えてる?」
「え?」
「今、その言葉をものすごく実感してるよ」

少しだけ照れくさそうな、だけど、これ以上ないくらいのやわらかい笑みが、青空の下に咲いた。


「俺の幸せは、あなたです」





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