おとなり契約結婚〜幼馴染の小児科医が推しを盾に結婚を迫ってくる件〜
「俺の子供を産んでくれるか?」
「うん、任せて!」
他の誰にもこの役目を譲ったりしない。
切羽詰まったように千春を求める香月からは、いつもの気遣いが消え失せる。
身体を重ねているこの時だけは、他のことを考える余裕もないのか香月と対等でいられることに千春は気づいていた。
「ちぃ……愛してる」
湿り気を帯びた吐息と共に吐き出される、甘露のごとき甘い囁きに身体が震える。
(佐久間先生、ごめんなさい……!私、この顔にとっても弱いんです!)
無理をしてはダメだと頭では理解していても、千春を欲しがる香月の訴えかけるような顔には抗えない。
休憩を挟まず行われた二度目の営みは一度目より一層激しいものになった。
香月からたっぷり愛を注がれた千春は糖蜜のようなトロリと生ぬるいまどろみの中に意識を沈めた。
星川恵流を好きになったのは横顔が香月に少し似ていたからだと伝えるのをすっかり忘れていた。