おとなり契約結婚〜幼馴染の小児科医が推しを盾に結婚を迫ってくる件〜
4.封印された恋心

(荷物はこれで全部……かな?)

 新婚旅行に出掛ける当日の朝、千春は出発前に荷物を入念にチェックしていた。
 ベッドの上には一泊分の衣類と洗面具、スマホの充電器。そして、真新しい下着が並べられていた。
 新婚旅行に行くとなった後、千春は芽衣に懇願し、一緒に下着を買いに行ってもらったのだ。花柄レースのハーフカップのピンク色の下着のセットは、これを着たら間違いないと芽衣からお墨付きをもらった。

 いや、もう……。この場合における正解って何?っていう話だ。

(我ながら……なんてベタな真似を……!)

 購入から一週間が経ちすっかり正気に戻った千春は、恥ずかしさのあまり顔を手で覆った。真新しい下着なんて持っていったら、ヤル気満々だって思われたりしないだろうか。

 持っていくべきか。置いていくべきか。

 香月と泊りがけで旅行……何かを期待しないはずがない。だって二人は夫婦なのだから。そういう行為をすることに引け目はない。

(べ、別に……!香月くんに見せるために買ったんじゃないし!)

 千春はこの期に及んで見苦しい言い訳をすると、おろし立ての下着をボストンバッグの中にむぎゅっと押し込んだ。

 バッグを持ち隣家へ向かうと、カーポートに停められていた車の中では香月が首を長くして待っていた。

「準備できたか?」
「うん」
「じゃあ出発するか」

 荷物をトランクルームに乗せると、車のエンジンがかけられていく。
 いざ出発!

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