おとなり契約結婚〜幼馴染の小児科医が推しを盾に結婚を迫ってくる件〜

「ただいま!」

 帰宅の挨拶を乱暴に言い放つと、階段を駆け上り自室に飛び込み後ろ手で扉を閉めた。
 
 千春はへなへなとその場に座り込んだ。祭壇に飾ってある星川恵流のブロマイドに縋りつき助けを求める。

「私はどうしたらいいんでしょう、恵流様……」

 こんな結婚、普通じゃない。早く離婚するべきだと頭では分かっているのに。

(……封印していた恋心が溢れ出して止まらないんです)

 固く封をして決して表に出さないようしたはずなのに……香月が無理やりこじ開けようとしてくる。

 抱き寄せられ、微笑みかけられ、あまつさえキスをされると心臓が痛いくらいに脈を打ってしまう。

 定期検診を終えたばかりだが、もう一度精密検査をしてもらった方がいいのではなかろうか。

 ……星川恵流のブロマイドは何も答えてはくれなかった。

< 92 / 171 >

この作品をシェア

pagetop