死神のマリアージュ

雅希にジーンズ貸しちゃダメ

悠希おじさんは「じゃ」と言うと、コホンと咳ばらいをした。

「長峰悠希です。パイロットを育成してます」「おーっ!」
「空の男キターッ!」「それ違くね?教官だろ」
「つっても二年前から非常勤にしてもらったんで、今はほとんどそっちの仕事にはかかわってないが」
「じゃあ今のご職業は」「兄ちゃんと同じく、ほぼ無職だな」
「えーっ!?」「ぶっちゃけ、どうやって生活してるんですか?」
「長峰家は元々資産家でな、資産の中でも主に土地を持っててさ。それを基にいろいろやりくりしてる。たとえばこのマンション。土地と建物は俺のだから」
「あぁ、それでペントハウスを独り占めして好きなように改装できたんですね?」
「簡単に分かりやすくまとめてくれてありがとう、蘇我直哉くん。ここだけじゃなくて他にも土地や建物持ってるし、別の資産もたんまりあるから、まあ俺らが会社員として働かなくても食い扶持に困ることはねえのよ」
「今流行りの“早期リタイヤ生活”を楽しんでるんですね!」
「まあな。もちろん、資産を増やし続ける努力は怠らないが」
「あっ、じゃあ悠希おじさんもこの広~い家に住んでるんですか」
「ああ。元は俺一人で住んでたところでユキと出会って、ユキを口説き落としてこっちに住まわせて」
「同棲キターッ!」「“口説き落とす”なんてロマンチックぅ」
「ワタシは元々このマンションの下のほうの階に住んでいたのよ」
「そうなんだ」「じゃあお二人が出会ったのもこのマンション?」
「そうだったかしら、ダーリン?」「うーん、たぶんそうだろ。俺たちの接点はここしかなかったから」
「“ダーリン”だって!言いたいし言われたい!」
「ちなっちゃん、目がらんらんと輝いてる」「恋ネタはちなっちゃんの大好物だから」
「で、それから兄貴がサヤちゃんと結婚することになったのを機に、俺んちで一緒に住もうぜって話を持ちかけて、現在に至るというわけだ」
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