死神のマリアージュ

そういう関係

「“セレナ”の玄関ドアにはもちろん鍵がかかってたし、試しにインターホンを押してみたけど応答もなかった。ていうか、私たちが行った何日も前から誰も“セレナ”に出入りしてない感じだった」
「そうか」
「ねえ父さん、綿貫さんが“退学”したタイミングで礼子さんも“お店を休みにしてる”って、偶然にしてはできすぎだと思わない?」
「つまりおまえは何が言いたいんだ?」
「だから・・父さんは何か知ってるんでしょ。この“件”について。それともこの“事件”ってハッキリ言ったほうがいいの」

食卓を挟んで、父さんと私はお互いにらみ合った。
けど今回も、娘には甘い父さんが、私に一枚の紙を渡すことですんなり引き下がった。

「礼子さんから。おまえに渡してくれって頼まれた」
「これ・・」

その紙には、急で申し訳ないけど、しばらくの間石の販売を休業すること、だからその間“セレナ”も休むこと、今のところは再開のめどがたたないと書いてある。

「“それは来週かもしれないし、三か月後になるかもしれない。ホントに分からないの。ごめんね”って・・」

紙から父さんに移した私の目線を、父さんはしっかりと受け止めた。
< 236 / 359 >

この作品をシェア

pagetop