眠れる森の王子は人魚姫に恋をした
文と別れてからあっという間に一か月がたった。

うちの美容液の影響で顔がただれたと騒いでいたSNSへの投稿はあっさりと原因は別だったと訂正の投稿がされ事なきを得た。他の部署で発生していたトラブルも全て自然と収まったそうだ。立て続けにトラブルが勃発していたので会社が倒産するのではないかと囁く社員もいたそうだ。

 こんなことくらいで潰されてたまるか。

こっちは子どもの頃から御曹司教育を受けている。つまり、企業の経営者として心得も対応の仕方も刷り込まれている。
このくらいのトラブル、俺一人で収束させられたはずなのに…。

文から別れを切り出され、俺があっさりと了承した後、何事も無かったかのようにすべての問題が片付いた。矢部芙美の関係者から俺と別れるように脅されていたのがコレで明白になった。もしかすると、あのカフェに矢部芙美の手下のものがいたのかもしれない。

「あー…、もう無理。さっさとより戻したいんだけど。」

「副社長が女性にそこまで執着するなんて、驚きです。」

あの日以来、文から連絡が来ることは無かった。当然、俺からもしていない。

「もう少し証拠が集まるまでご辛抱ください。」

もう2度と同じことが起こらないよう、矢部芙美を追い込むための証拠や証言を集めていた。

「お前仕事遅いな…。」

「はっ!?何をおっしゃいますか!!はっきり申し上げますがこの件は社長のプライベートな事なのでハッキリ言って業務外です。」

俺の放った一言にカチンときたのか、珍しく反論してきた。

「会社に影響出てるんだから業務内だろっ!」

「では、今後女性関係の後始末はご自身でなさってください。」

俺が遊びで手を出した女の後始末はいつも黒田が上手いことやってくれていた。

「それは無理な話だ。俺はその気がないと言っているに、女が勝手に会社まで押しかけてくるのが悪い。職場まで来てしまったならお前の仕事だ。」

口角を片方だけ少し上げた。

「左様ですか。副社長がそのようにおっしゃるならこちらにも考えが…。」

『ヴーーーッ、ヴーーーッ』

デスクに置かれた俺のスマホが震えていた。バイブの震え方から更に通話のようだ。何か言いたげな黒田に手のひらを見せ黙るように制した。

「もしもし、将文さん??」

葛城社長とは慶介のBARに行った夜にプライベートの連絡先を交換していた。

『今、大丈夫かい?』

「はい、会社の自室にいるので問題ないです。」

『仕事はどうだ?色々あったみたいだが落ち着いたか?』

どうやら彼の耳までひと月前の騒動が届いているようだった。

「今では何事もなかったかのように落ち着いてますよ。それより突然どうされたんですか?」

『君に報告したいことができてね。』

嬉しそうに話す将文さんから衝撃的事実を知らされた。
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