十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

 冷たく湿った牢屋に一人、どれぐらい居たのだろう。酷く汚れた醜い姿に成り果てても、何も感じなくなってしまっていた。

 久々に人の声を聞いた私は、両手と首を鎖に繋がれたまま地下牢から出ると、灰色の淀んだ空の下で処刑台に立った。今にも泣き出しそうな空は、まるで私の心を映しているようなのに、何故か涙は溢れては来なかった。

 処刑台に上がってきた殿下を見るまでは。

「ごめん、なさい……ごめ、なさ……っ」

 いくら泣いて謝っても、殿下の心は返ってこない。

 いや……元々殿下の心には私なんて存在は無かった。ずっとずっとあの、聖女のことを慕っていた。

 許されないことをしてまで、殿下を独り占めしようとした愚かな私を、殿下はもう見たくもないはずだ。殿下が静かに抜いた剣身に映る醜い自分の姿に、もう早く消えたいとまで思った。

 その想いが通じたのか否か……執行人である殿下が憎しみを込めた目で私を見つめながら、首めがけて剣を振り下ろす。

 最期にもう二度と見ることが出来なくなる殿下の瞳を見つめた。どうしてか、彼の瞳に宿る憎しみの中にどこか悲しみが混じっているような……そんな気がした。

 程なくして、繋がれた鎖諸共私の首は刎ねられ赤い血が飛び――人生の幕が閉じた。


 ……はずだった。
 

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