十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

 憎いと思っていたはずの相手なのに、今の私は素直にサラの事が可愛いと心の奥底から思った。

「サラさんはお父様であるハベル男爵様と共に新たな薬を開発し、その功績が認められ本日より皆さまとこの国をより良いものにしていく大事な一人として迎えられました。学校での時間は一年を切っていますが、大切な仲間として良い関係を築きあげていって下さいね」

 先生の紹介で益々教室内のざわめきが響き渡る中、私は大きく静かに深呼吸をして気持ちを静めた。

 今までとは何かが違うこの人生……でも私のやるべきことはただ一つ。

 サラといい関係を作って、殿下との恋を応援する。例え、殿下からのクリティカルヒットを与えられようが、私は絶対にめげたりしない。殿下との関わりは、昨日までなんだから。

 意気込んだ瞳を殿下に小さく向けると、どこか仏頂面な表情でサラを見つめているのは気のせいかしら。

 視線を送りすぎては勘違いされると、そそくさと視線をサラに戻す。

 目で追いたくなるような不思議なオーラを漂わせる彼女は、緊張を隠すように笑みを浮かべたまま誰も居ない席に着いた。

「……!」

 これまでの記憶の中とは違う風景に、私はやらかしたと頭を抱える。

 本来なら聖女として扱われるサラは、殿下が直々に隣へ座るように声を掛け、校内の案内の提案を持ちかけて二人で過ごす時間が始まるのだ。親密になっていく二人に我慢できなくなって、私のサラに対する嫌がらせが始まっていくはずなのに。

 声を掛けるべき相手が私の横に居てどうするんですか!不安がって、サラがとっても可哀想じゃない!


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