網川君の彼女は、お値段の張る“ユーリョーブッケン”。

レポート提出。


――キーンコーン・・・

「あーっ!」


猛ダッシュする音が廊下に響き渡る。


レポート提出を念押しされたその翌日。


職員室なんて気にしない。


怪訝そうな顔でこっちを見てくる他のクラスなんて気にしない。


ドアを開けて・・・


今まさに授業を始めようとしてる数学の先生の目なんて気にしない。


いいんだ、このチャイムが終わるまでに席についてればこっちの勝ちなんだから。


勢いよく窓際の席までたどり着いて、


笑いをこらえようともしない蘭ちゃんなんて気にしない。


チャイムの最後の音の余韻が消える前に、席についた私。


ギリ間に合っていると信じる。


「・・・沙月さん、」


「っはい・・・ハァッ・・・ッ、」

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