約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される
「今日は突然お邪魔しちゃってごめんね!」

 あ、高橋さんの声だ。

「私もマネージャーとしてサッカーを勉強しておきたくて。涼君なら資料を沢山持ってると思ったの」

「大したものじゃない。図書室にある本ばっかりだぞ。高橋はまだ本調子じゃねぇし、部活に合流するのは早い」

 当たり前だが涼くんの声もする。わたしは植木の隙間から2人の様子を覗いてみた。
 高橋さんは制服姿で紙袋を下げ、会話から読み解くに中身はサッカー関連の書籍だ。

「分かってる。でも事件の犯人が掴まらないとサッカー部の練習はないでしょ?」

「練習が無いから暇な訳じゃねぇ。キャプテンに高橋のフォローをしてやれって言われたからだ。お前、キャプテンに何か言っただろう? 学校の送り迎えまでしろとか、ありえない」

「ありえなくない。だって浅見さんの送り迎えはしていたよね? ご両親に頼まれて?」

「そうだ。桜子と高橋は違う」

 クラスメートの前で桜子呼びをするのは、いつ振りだろう。というか、わたしの前でも滅多に名前を言わないので緊張する。

「あたしと浅見さんはどう違うの?」

「そりゃあ高橋はマネージャー、桜子は幼馴染みだろ」

 無論、高橋さんはそんな関係性を尋ねてはいない。形式めいた答えじゃ彼女の気質が治まるはずなく食い下がった。

「涼君は浅見さんが好き?」
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