約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される

鬼姫様に選ばれるもの



 柊先生の車で自宅まで送って貰い、あっけなく解散。わたしは走り去る車を見えなくっても見送っていた。

 車中では怪我がないか等、柊先生による最小限の質問しかされず、助手席へ乗り込む四鬼さんは沈黙。頬杖つき窓の外を眺める様は怒っていて、心当たりが有り過ぎるため触れられなかったのだ。

 ちなみにスーツの男性は別の車に乗せられ、その後の行き先を聞いても先生ははぐらかす。
 ワンピース似合っていますよ、なんて誤魔化す笑顔に引っ掛かりるのは【私】の影響か。わたしの中の【私】をひとまず【鬼姫】と呼ぼう。鬼姫は柊先生に良い感情を抱いていなそうだ。

「はぁ、疲れた」

 せっかくオシャレをしたのに台無し。四鬼さんが気分を損ねるのも無理はない。

 四鬼さんや彼の周囲に秘密がバレている以上、同じ体質の人がいる件を考えなければいけない。考えたところで解決に至る訳ないが、本当に血を飲まないと生活出来ないのが自分だけじゃないなら嬉しくはある。たとえ強盗未遂の犯人が同胞だとしても。

 このまま突っ立っていないでシャワーを浴びよう。頭を冷やせばいい案が浮かぶかも、そう考えついた時、涼くんの家のドアが開いた。
 わたしは反射的に庭へ隠れる。
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