約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される
 それでも用意して貰ったのだから口を付けないのは失礼か。当主の視線を浴びつつカップを寄せる。
 緊張で味はよく分からない。
 一族会談ってどんなものなのか、わたしは何をしたらいいんだろう。

「当主、本題を切り出してはどうだい? 我々も暇ではない。彼女が【鬼姫】なのは本当でしょうな?」

 痺れを切らしたよう当主の両隣へ腰掛けた男性等が話し始め、会談とやらがスタートしたみたい。それぞれの手元に置かれた書類を捲り、わたしと比べてきた。

「彼女が【鬼姫】であるのは千秋との共鳴、血液検査の結果でほぼ確定している。各種の数値に関しては柊に説明させたい」

「四鬼家が【鬼姫】を迎え入れるのは一族の悲願。何十年と探していた者がこんな風に見付かるとは。当主よ、これも縁だろうか?」

「そうだな。【鬼姫】とは四鬼の当主に嫁ぐ約束された花嫁だ」

 口を揃えて【鬼姫】というワードを出す。

 わたしにも資料を渡されるが、びっしり記載された文字が霞む。難しい言い回しをする会話のテンポについていけず、頭がボーッとしてしまった。

「桜子ちゃん?」

「あっ、ごめんなさい。なんだか頭が重くて。結局、ここにいるみんなは同じなの? 四鬼さんも血を飲まないと生活できない?」

 視界がぐらつくと世間体など崩れ、本質のみを尋ねる。

 堅苦しい理屈を抜きにして、彼等が同胞だと感じた。そう、匂いだ、匂いが同じなんだ。
 こうして直接尋ねなかっただけで本当は知っている。だからこそ、わたしはここへ来た。

「うん、同じだね。僕も異性の血を飲まないと生きてはいけない。君の前に集まったのは鬼の一族だよ」

 みんな揃って赤い目となり、わたしを見る。

 四鬼さんが鬼、そしてわたしも鬼。そう認めざる得なくなると例の【私】が意識内で目覚めた。
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