約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される
 涼くんはわたしと歩む為に鬼を知ろうとしてくれ、吸血行動以外で活力を得る方法を先生に教えて貰った。

 オカルトやファンタジー要素を信じてこなかった涼くんだが、鬼の活力についてはすんなり受け入れて熱心だ。

「はぁ、夏目君は若いだけで技巧も無さそうですね。あなたは満足してますか? 宜しければ私がお相手しますよ。年寄りなので数はこなせませんが、その分、1回がしつこく濃厚です」

「おい見ろ、セクハラというのはこういうのを言うんだ! 桜子ちゃん耳が腐ってしまうよ、柊の言葉なんか聞いちゃ駄目だ」

 先生にすかさず突っ込みをいれる四鬼さん。まるで兄弟みたい。

 わたしは当主を拒むも、当主の立場は依然として揺るがない。四鬼さん達がわたしに寄り添う位置取りをしたが為、対立軸と見なされているらしい。
 2人には与えられてばかり。返せるものがあればいいのに。

 ふいに先生の方と目が合った。

「あなたは人と鬼との恋、私の夢の続きを見せてくれます。それだけで充分です」

 わたしと涼くんを見守る瞳は穏やかで、少しだけ寂しそうで。

「僕も父親から解き放たれて身軽になれた。心が縛られない、軽いんだ。桜子ちゃんのお陰だと感謝しているよ」

 四鬼さんが視線を合わせてくる。

「わたしこそ、ありがとうございます」
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