約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される
 絵には桜の木とその傍らに立つ着物姿の少女が描かれていた。少女は夢の中の鬼姫に似ていて花を仰ぎ、眩しそうに翳す。
 その手に指輪はーーない。

「何処にあるの? この桜」

 絵の前に立ち、熱心に鑑賞する。

「確か隣街だったと思う。流石に咲いてないだろうけど、見に行ってみるか?」

 涼くんも隣に並ぶ。

「……それ、デートのお誘い?」

「あぁ、ついでにクレープも食おうぜ。四鬼千秋に自慢されたからな」

「甘い物苦手じゃなかったっけ?」

「サッカーチップスと交互に食う。俺の好きな選手のカード出たらくれよな」

「あげない」

 可愛げない事を言いつつ、涙がこぼれた。

「ヤキモチだろ?」

「うん、だって涼くんの好きはわたし1人でいいんだ」

 彼の胸に泣き顔を預け、ここが長い間探していた居場所だと実感する。

「バカ、当たり前だろ」

 わたし達はこれから約束のない明日を生きていく。一歩ずつ、ゆっくりでも未来に進もう。

 わたしには秘密がある。わたしは鬼だ。

 わたしには夢がある。人間である涼くんにいつか求婚したい。


おわり
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