約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される
 市販されていないスポーツドリンクと聞けば、味見したくなる。

「だ、駄目に決まってるだろう!」

 けれど涼くんは露骨な拒絶をした。さっとペットボトルを引いてしまう。

「あ、ごめん、飲みかけに手を付けられたら嫌だよね」

「……そんなに飲みたければ、新しいのを家から持ってくるけど?」

「ううん、そこまでじゃない」

 気まずい空気となり、わたしは笑顔を必死に保つ。

「さて今日も勉強しますか! 涼先生、よろしくお願いします」

 気を取り直すよう、明るく言う。

「……高橋も来週から学校に来るってさ」

 ふいうちで高橋さんの話題をだされ、間を開けてしまった。涼くんはタイミングを見誤ったかと眉を寄せるが、わたしは首を横に振る。

「良かった」

「本人から携帯にメッセージきた。あと転校生も来るらしいな、ちょっとした騒ぎになってる」

 続けざまに転校生の話をされ、情報量の多さでわたしは固まった。
 まず高橋さんが学校へ来るのは良い話だ。が、涼くんはそれを本人から伝えられたとのこと、つまり2人で連絡を取り合っている。

 涼くんはあまり連絡先を教えたがらないタイプで、わたしがメールしてもマメな返信はしてくれない。なのに高橋さんとはやりとりするのか。
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