声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
 自分の部屋のベッドに横になりながら、深く息を吐いてお父さまに言われたことを考えます。

『大丈夫かい、ご令嬢』

 黄金色の綺麗な髪を靡かせて、アメジスト色の透き通った目で私を見るオリヴィエ王子。
 私を暴漢から身を挺して守ってくださった強いお方──

 いつかお兄さまに婚約者ができるまで傍にいたいと考えていたのに、まさか自分のほうに先に婚約話が来るなんて。

『大丈夫、私はローゼの傍から決して離れないから。何があっても必ず』

 あの日礼拝堂で言ってくださった言葉が思い浮かぶ。
 お兄さまはこのこと知っていらっしゃるんでしょうか。
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