声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
 そんなことを考えながらなかなか眠れず、ホットミルクを入れに廊下に出ると、ばったりとお兄さまに出会った。

「ローゼ」
「(お兄さま……)」
「こんな遅くまでどうしたんだい?」
「(ホットミルクを入れに)」

 私は紙で書いてお兄さまに見せます。

「そうか、眠れないんだね。そうだ、明後日新しいドレスを見に行くのはどうかな? 前のドレスもいいけど、最近は社交界への参加も増えてきたし」

 お兄さま、私の婚約の事まだ聞いていないのですね。

「(ええ、ぜひ)」

 少し控えめに頷くと、お兄さまは「じゃあ、ゆっくり休むんだよ」と頭を撫でてご自分のお部屋に戻られました。

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