声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
 しばらく待っていると、国王さまとそして隣国の第二王子オリヴィエさまがいらっしゃいました。

「ローゼマリー、婚約を受け入れてくれたこと、ありがたく思うぞ」
「(とんでもございません)」

 私は最大限の敬意を払ったお辞儀をして国王さまにご挨拶をします。
 その横に立っておられるオリヴィエ王子は私に目で合図をくださいました。

「それでは、アッシュド国第二王子オリヴィエ・ブランジェ、そしてローゼマリー・ヴィルフェルトの婚約の儀を開始する」

 私は婚約証明書にサインをするため、階段を一段一段上っていきます。

 その長い階段を上る最中、私の頭の中にはいろいろな光景と言葉が思い浮かびました。


 修道院が火事になって見寄りのなかった私を拾ってくださったお父さま。
 いつもお世話をしてくださったクリスタさん。
 マナーをたくさん教えてくださったエリー先生。
 お屋敷の皆さん。

 そして、妹として私を受け入れてくださった大好きなお兄さま──

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