声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
「ローゼマリー・ヴィルフェルト。私は貴殿との婚約を解消する」
「なっ! オリヴィエ王子!」

 焦ったように言う国王と周りの側近たち。
 しかし、オリヴィエ王子は皆が言いたいことを理解し、そしてさらに続けました。

「だが、貿易業での協定は予定通り結ばせてもらう。このオリヴィエ・ブランジェの名において、我が父に進言しよう」
「なんと、ありがとうございます」

 オリヴィエ王子はマントを翻すと、そのまま謁見の間を出て行かれました。


「お兄さま」
「ローゼマリー。一緒に帰ろうか」
「はいっ!!」

 お兄さまと私は手を繋いで、王宮を出て行きました。
 今日は私の誕生日だったことに気づいたのは、少し後のことでした──

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