声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
「ユーリア、久しぶりだね」
「ええ、先日のパーティーはお招きいただき、ありがとう」
「楽しんでくれたかい?」
「あなたの自慢の妹が見られてよかったわ。そうだ、ここじゃなんだから、バルコニーで少し話せないかしら?」
「ああ、構わないよ」

 バルコニーは冷えるけど、それでもラルス様とお話できて幸せを感じた。

「あなたの妹さん、ローゼマリーといったかしら? ずいぶん可愛い見た目ね」
「ああ、自慢の妹だよ」
「好きなの?」

 嘘ばっかり。
 あの子のことが大事で仕方ないくせに。
 私にはあんな笑顔もあんな優しい視線も向けてくれたことない。

 いつだって私の一方通行。
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