声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
「ごめんっ!」

 その言葉を言って彼女を追いかけていったラルス様。

「よかったですか、お嬢様」
「ええ、清々したわ。これでもう思い残すことはないもの」
「お嬢様は嘘が下手ですね」

 そうね、私は嘘が下手なのよ。
 感情を抑えきれない……。

「ねえ、ヴィム。少し胸を貸してくれる?」
「はい、もちろんでございます」

 私は執事であるヴィムの胸の中で子供のように泣いた。
 いつかこの苦しみから解き放たれることを祈って──
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