声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
『オリヴィエ・ブランジェ様
 先日は助けていただきまして、ありがとうございました。
 咄嗟のことできちんとお礼が申し上げられず、お手紙にて失礼しました。』
 
 そんな短い手紙でも、なんだか彼女の思いが伝わってきた。
 律儀に手紙を渡す彼女の心遣いに、もうすでに心が奪われていたのかもしれない。


 そんな彼女との婚約が決まった時は私自身嬉しくて仕方なかった。
 どんな趣味があるのだろうか、どんなものが好きなのだろうか。
 多くのことを聞きたくて仕方なかった。

 そして、ついに婚約の儀の当日。
 彼女には他に好きな人がいることを知った。

「お兄さまっ!!!! 大好きでした!!!」

 なんて素直でまっすぐでそして思いが強いのだろうか。
 義理の兄と妹。
 そんな絆の間に入れるわけがない。
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