声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
 ん?
 中からラルスさまのお声が聞こえてきます。
 どなたかとお話されているので、お仕事中でしょうか。

「やはり支援金は全て横領していたようです。子供たちもかなりひどい環境下で生活をしていたかと」
「わかった、引き続き調査にあたってほしい」
「かしこまりました」

 お部屋のドアが突然開いて出てきたラルスさまとばっちり目があってしまいました。

「ローゼマリーっ!?」

 私はごめんなさいという気持ちを込めて必死に何度もお辞儀をします。
 何度かしたところでラルスさまに止められました。

「大丈夫だよ、何かあったかい?」

 私はお邪魔じゃないかと思いながらも少しかけた文字を見せました。


『らるすさま、ありがとうございます』


 私の書いた文字を見てラルスさまはとても喜んでくださいました──
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