声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
 私はようやく伝わって嬉しくて笑顔を見せました。
 でもメイドさんは少し考えたあとで、メイドさんより背丈の少し小さい私に目線を合わせて言います。

「お嬢様。もうあなたはここのお屋敷のご令嬢です。あなたの境遇は旦那様より伺っております。もうあなたは掃除も洗濯もしなくていいのですよ?」

 私の頭はその言葉で止まってしまいました。
 もしかして、用済みということでしょうか……。
 それとも私ごときではやはりお役に立てなくて、お邪魔にしかならなくて……。

 そう考えていると、メイドさんが「違いますよ」とお話の続きをされました。

「あなたがいらない人なのではなくて、あなたが必要だから。あなたにはもっと今からたくさんの幸せを感じてほしいのです。その幸せのために働けるのが、私たち使用人の幸せなのです。だから、このお屋敷にいる間はわたしたちにお任せ願えませんか?」

 そんな風に言われて私は言葉を失いました。
 声が出ないからではありません。絶望したからでもありません。ただ、なんて優しい言葉をくださるんだろうと嬉しかったからです。
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