声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
「ローゼマリー?」

 どうしたのか、というように私を心配するラルスさまのほうを向いて私は練習したカーテシーを披露してみました。

「(ラルスさま、いつもありがとうございます)」
「──っ!」

 私は精いっぱいの感謝の気持ちをこめてドレスの裾を持ちながらちょんとお辞儀をしてみました。
 そんな私の挨拶に目を点のようになさってじっとされています。

 はあ、やはりお気持ちは伝わらなかったようです。
 ごめんなさいという気持ちをこめてもう一度いつもするように頭を下げてお辞儀をしました。
 すると、頭を上げた私の視界は何か真っ暗になりました。

「──っ!!!!」
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