声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
「ローゼマリー様、素敵なお召し物ですわね」
「(ありがとうございます)」

「髪飾りも素敵ですわ!」
「(クリスタさんにつけていただいたんです)」

 私はご挨拶とお礼を言えないかわりにお辞儀をしてお返事をします。
 皆さんあたたかくて優しい方々ばっかりです。

「ふん、ごますり令嬢たちが生意気な」
「声が出ないそうよ、可哀そうね~」
「それにあの髪飾りって確か亡くなった、アデリナ様の形見のお品でしょう? なんであんな娘なんかに」

 そんな言葉が聞こえてきて、私は少し後ずさってしまいます。
 やはり、私の養子入りは良く思われていないのですね。
 お父さまに言ってご迷惑にならないように早くに下がらせていただかないと……。
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