声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
「言いたいことはここに文字で書いてごらん」

 そう言われて私はその紙を受け取りましたが……これは困りました。
 私の困惑する様子を見て「どうしたんだい?」とラルス様は聞かれます。

 私は修道院で読み書きを教えてもらっておらず、文字を書くことができません。
 口を開けてつい話そうとしても、声がでずに私はなんとか意思を伝えようと、俯きながら首を左右に振りました。

「手が痛むかい?」

 ラルス様はそうおっしゃいますが、違うと言葉で伝えることができず、私はまた首をふります。
 私の思いをくみ取ろうとじっと私を見つめてくださるラルス様。
 そのサファイアブルーの瞳は今までに見たことがないほど澄んでいて、私には神様のように見えました。
 思わず見つめられて胸がきゅっとし、少し顔を赤くしてしまったように思います。

「身体が痛いわけではないんだね?」
「(ふんふん)」

 私は何度もこくこくと頷いてその通りだと伝えます。
 すると、ラルス様は口元に手をあてて考えたあとに、私に寂しそうな声で聞いてきました。
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