声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
「──っ!!!」
 ダイニングに足を踏み入れたその瞬間、いきなり大きな声が聞こえてきて私は身体をびくりとさせました。

「お誕生日おめでとうございます!!!!」

 クリスタの声を筆頭に、他のメイドさんや執事さんも私にお祝いの言葉をくださいます。

「ローゼ、お誕生日おめでとう。こっちにおいで」

 私は戸惑いながらも呼ばれた通りお兄さまのほうへと向かいました。
 そこにはテーブル一面にたくさんのお料理やケーキが並べられています。
 素敵……でもお誕生日とは一体? そういえば私は自分のお誕生日を知りません。

「驚かせたかな? 実は君の本当の誕生日はわからないけれど、修道院にきた日付が資料にあってね。それが今日なんだ。だから今日をローゼの誕生日にしようと思うんだけど、どうかな?」

 私はあまりにも驚きの連続できょろきょろとしてはお兄さまをみて、またきょろきょろしてお兄さまをみての繰り返しをしてしまいます。

「これはみんなからのローゼへのお祝い、そしていつも頑張っているご褒美だよ」
「…………」

 もしかして、これを私に、ということでしょうか?
 私は自分自身をさしながらそのようにお兄さまに聞いてみます。
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