声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
「あなたの妹さん、ローゼマリーといったかしら? ずいぶん可愛い見た目ね」
「ああ、自慢の妹だよ」
「好きなの?」

 好き?
 ああ、そうかもしれない。

「ああ、可愛い妹として好きだよ」

 そう答えるとユーリアははあ、とため息をついて私に言い返す。

「あのね、わざわざ『妹として』ってつけるなんて『女として見てます』って言ってるものよ」

 ローゼを女としてみている? そんなことわかっている。わかっていて私は目を逸らしてきた。
 私はローゼを好きで、可愛い妹なだけじゃなく、女性として好きだ。

「誰かの婚約者になる前に、最後にお願いがあるの」
「なんだい?」
「もう一度、あなたに好きって伝えていい?」
「気持ちには応えられない」
「わかってるわ。聞いてほしいだけ」

 私は黙って彼女の願いを聞き届けることにした。
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