声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
「クリスタ、彼女の専属メイドになってもらえないだろうか?」
「ええ、もちろんでございますが、私でよろしいのですか?」
「ああ、君が適任だと思う」
「かしこまりました。精いっぱい努めさせていただきます」

 私は旦那様にお辞儀をして部屋をあとにすると、そのままラルス様の後について彼女の部屋に向かいました。


「私があなた様のお世話をさせていただきます、クリスタでございます。よろしくお願いいたします」

 その挨拶に声が出ない彼女は恭しい態度を私にとってみせました。
 自分でお掃除をしようとなさったり、ご自分でなんとかお役に立ちたいという思いがひしひしとこの数日伝わってきて、その奉仕精神は見習うべきものがあると感じました。
 だからこそ、私は彼女に仕えたいと思ったのかもしれません。

「ん? ああ! 伸ばすのか! リー!! ローゼマリー!!」
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