崖っぷち告白大作戦⁉︎〜彼氏と後輩に裏切られたら、何故か上司に寵愛されました〜
「伊藤さんも(じょう)、……えっと、……あなたのことをプライベートでは〝(じん)〟って呼んでいらっしゃいますよね? お会いしたことはないですが……璃杜(りと)さんも幼なじみだって話ですし……もしかして彼女からもそう呼ばれていらっしゃるんじゃないですか?」

 常務、と言いかけて〝あなた〟と言い換えられたのが、何だか夫婦みたいでいいなと思ってしまった尽だ。

「ん? ――まぁ確かにそうだね。なぁに? もしかして天莉(あまり)はそれが気になるの?」

 尽がじっと見つめると、天莉は少しだけ逡巡(しゅんじゅん)する素振りを見せてから、「せっかくお付き合いすることになれたのに……みんなと同じ呼び方は嫌だなって思っただけです……」と、愛らしい唇を小さく尖らせて見せる。

(可愛すぎるだろ)

 その拗ねたような表情と、天莉にしては珍しくワガママを言う姿が物凄く魅力的で、(じん)は控えめに突き出された天莉の唇を優しく()んだ。

「ひゃんっ」

 拗ねていると意思表示をしたのに、まさかそんなことをされるだなんて思っていなかったんだろう。

 びっくりしたように身体を跳ねさせた天莉の後頭部をしっかり押さえ付けると、尽は口付けを深くした。

「ふ、ぁ、……っ」

 そうしながら、ファスナーを下ろす任務を成功させたばかりの手を、今度は天莉の肩口へと移動させる。

 尽は彼女がワンピースの上に羽織っていたカーディガンの左肩を器用に肩から落としてしまうと、まろみを帯びた天莉の肩のラインを確認するみたいにスリスリと指先でなぞった。
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