崖っぷち告白大作戦⁉︎〜彼氏と後輩に裏切られたら、何故か上司に寵愛されました〜
「あー。やっぱり気付いちゃいましたぁ? そうなんですよぅ。だけどぉ、折角もらいましたしぃ……《《もったいないので》》先輩が飲んでくださぁい」

「えっ?」

 さっき、料理に関して天莉(あまり)がそういうことを指摘したら、細かいことを言うなと嫌味を言ってきたのに。

 天莉が呆然と紗英(さえ)を見詰めたら、さすがに自身の言動の矛盾に気付いたのだろう。

「先輩が言ったんじゃないですかぁ。手にしたものを残すのは良くないってぇ」

 確かに言いはしたけれど。

 天莉はそれほどお酒が強くないのだ。

 (じん)からも、自分の目が届かない以上、今日は出来ればアルコールは摂らないで欲しいとお願いされていたから、ソフトドリンクでしのぐ予定だったのに。

先輩(せんぱぁい)今日(きょぉ)はぁーもしかしてパーティーなのに車を運転して来ちゃった系ですかぁ? もしそうならTPPでしたっけぇ? それがなってないですよぅ?」

 ここで〝環太平洋経済連携協定(TPP)〟はおかしいので、恐らく〝TPO(時間(Time)場所(Place)場面(Occasion))〟と言いたいんだろう。

 天莉が自家用車を所有していなくて、いつも公共の交通機関で通勤しているのを知っているくせに、わざと言っているとしか思えない。

「今日はさすがにタクシーで来てる、けど」

 しぶしぶ答えたら「だったらぁ、妊娠中の紗英と違って(なぁーん)にも問題ないですねぇー? はい、どぉーぞ」

 悪びれた様子もなくグラスを押し付けられた天莉は、仕方なくそれを口にしたのだけれど。

「美味しい……」

 甘くて飲みやすいお酒は、思いのほか喉が渇いていたらしい天莉の身体にスーッと染み込んできた。

 気が付けば、料理も口にしないまま、ひと口、ふた口と、全部飲み干してしまっていた天莉だ。
< 230 / 351 >

この作品をシェア

pagetop