崖っぷち告白大作戦⁉︎〜彼氏と後輩に裏切られたら、何故か上司に寵愛されました〜
***

天莉(あまり)、準備出来たよ?」

 (じん)の声に、天莉が「はーい」と答えて小さな赤ん坊をそっとベビーベッドから抱き上げる。

 相変わらず尽の足元には愛猫オレオがくっ付いているけれど、オレオなりに察するところがあるのか以前のようにのべつ幕なし抱っこをせがんだりはしない。

 今みたいに尽が何かをしようとしている時にはそっと足元に寄り添うようにくっ付いているのだが、そんなオレオの姿がいじらしく見えて、天莉は愛しさにキュッと胸が小さく拍動するのを感じた。

 それにも増して――。

 小さくてか細くて弱々しい腕の中の我が子の可愛さと言ったら!
 本当に言葉に出来ないくらいで。


「まなちゃん、お風呂入ろうね」

 〝まなちゃん〟と言うのはもちろん愛称で、いま天莉の腕の中にいる、生後一週間足らずの二人の子供の名は、高嶺(たかみね)茉菜花(まなか)という。

 今日は天莉と茉菜花が産院――御神本(みきもと)レディースクリニックを退院して来て初めて、茉菜花を風呂に入れる日だ。


「産院でも副医院長の奥さんだと言う助産師にしっかりレクチャーしてもらったし、直樹(なお)のところでも毎日のように勉強(おさらい)してきたからね。安心して身をゆだねていいぞ、茉菜花」

 尽と天莉の娘の茉菜花は予定日通り、三月二十六日に誕生したのだが、直樹と璃杜(りと)のところの赤ん坊は予定日より一週間以上早い二月二十七日に生まれてきた。

 早く出てきたからといって、別段小さいということもなく、むしろふわりの出生体重の二六七八グラムを軽く超えた三二〇二グラムの元気な男の子で。
 お姉ちゃんになった〝ふわり〟と(いん)を踏んだように〝ほわり〟と名付けられたその子の沐浴を、(じん)天莉(あまり)の入院中、二人に頼んで何度かさせてもらっていたらしい。
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