そんな平和な村で育った一人の鬼の娘、サツキはごく普通の活発な娘だった。
彼女は強く賢く美しい鬼姫様の姿にあこがれ、いつも
「わたし、鬼姫様みたいな立派な人になるんだ!」
といっていた。
幼いころから優しく元気なサツキは、よくいろいろな人の手伝いをして、村の人々に好かれていた。
サツキは女の子だったけど、友達はほとんどが男の子で、よく村中を走って追いかけっこをしたり、村で虫や動物を捕まえたりしていた。
サツキが15になったころ、友達と木の枝で侍ごっこをしていると、緊急を告げる鐘の音が響き渡った。
妖怪狩りと名乗るものが刀を持ってやってきて、突然村の若者にきりかかったという。
「サツキ、俺たち、殺されちまうのかな…?」
不安そうな顔をする友達を励まし、村の入り口まで一緒に見に行った。ツンと鉄臭いにおいがした。
そして怖いくらいに整った顔の人間の少年が、刀を持って子供から大人まで妖怪たちを容赦なく殺している姿があった。
妖怪狩りは鬼姫様と戦っている。鬼姫様は強くて賢い。どれだけ強くても勝てるはずがない。
きっと大丈夫。そう思って両手を合わせて祈る。
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