クールな君と愛しすぎる僕
指を絡め合って、ゆっくり歩く。

嬉しそうにニコニコしている登羽と、真顔の寧音。

街に出ると、登羽が言う。
「寧音ちゃん、必要以上に僕以外の人間見ないでね!」
「うん。わかってるよ。
登羽、ヤキモチ妬きだもんね」

「うん!だからヤキモチ妬かせないで?」
「うん」

「よし!お利口さん!」
手を繋いでない方の手で、頭を撫でる。

「私、あやされてるの?」

「そうなの~!
僕の言うこと聞いてくれる寧音ちゃん、好き~」

「私も、登羽が好きだよ。
だから、できる限り受け入れるよ。
気持ち、わからなくもないし」

「ん?」

「うーん…もう、話してもいいかな?」

「ん?何を?」
寧音の顔を覗き込み、首をかしげる。

「私ね。
元々はこんなんじゃなかったの。
束縛とかしてたんだよ?
高校生の時の彼のこと」

「そうなの?」

元彼の話なんて聞きたくないなと思いながらも、せっかく寧音が打ち明けようとしている。
グッと我慢して、微笑み聞く。

「でも……一気に嫌われたの。
ずっと、我慢してたんだけど……抑えきれなくて……
何処にも行かないで傍にいてとか、毎日会いたいとか、数分置きに連絡したり……スマホも勝手に見ちゃったの…」

「そっか」

そんな“程度で”嫌うの?
よくわかんない……!

登羽からすれば、寧音のそんな行為は大歓迎だ。


「でも別れて冷静になると……なんて最低なことしたんだろうって思って、自分で自分のことを軽蔑した」

「僕には、束縛していいよ?
僕は、そんなことで嫌いにならないよ?
僕だって束縛してるし」

「ううん。いいの。
…………てゆうか、無理なの」

「え?」

「彼と別れてから、わからなくなったの。感情が」

「…………え…?」

「もちろん。登羽が好きとか、登羽といて楽しいとか、離れてると寂しいとかちゃんとわかる。
でも、感情の表し方がわからなくなったの。
気軽に笑えなくなった」

「そう…なんだ……」

「だからね。
登羽の束縛、わからなくないから受け入れられるよ」

「…………じゃあさ!」
「うん」

「スマホ、見ていいの?
監禁OK?
寧音ちゃんに関わる奴、片っ端から社会的に抹殺もしていい?
寧音ちゃんの着る服とか、メイク、持ってるバッグ、はいてる靴、全部僕の好みにしていい?
髪の毛も、寧音ちゃんはショートボブが似合うと思うんだ~」

「え……?」
立て続けに出てくる思わぬ登羽の言葉に、さすがの寧音も退いている。

無表情の寧音。
しかし、寧音がかなり退いているのがわかった登羽はニコッと笑って言う。
「━━━━━━なーんてね!(笑)
冗談だよ?(笑)」

「じょ、冗談?」

「うん!冗談」
(やっぱ、さすがに受け入れないよね……)


「そっか。
……………人のこと言えないけど、スマホを勝手に見るのダメだよ。
見ても、何も良いことないし。
どちらも、傷つくだけだから。
私は安心したくて見たのに結局傷ついて、彼も、幸せも失ったから」


「そうだね。
“世の中には、知らない方がいいことがある”もんね!」

登羽の声が、やけに寧音の耳に響いていた。
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