あのスーツ男子はカクテルではなく土の匂い
Ⅰ
都会の輝く摩天楼が窓の外からよく見える。
今日もビル最上階のこのバーにやってきた。
そして、私はこの店にたくさん来るイケメンをこっそり観賞する。
銀座でOLを始めて五年目になる。
仕事にも慣れ、後輩も出来、早い同期は結婚していく。
おかげさまで、いじめもなく、それなりのOL生活。
生活していくには丁度いいお給料を頂戴し、私的には十分満足出来る毎日。
同期の由美が言うには、ドキドキのない枯れた毎日らしい。
他人から見たら全くないように見える私でも、最近は定期的に来るこのバーのお陰で、十分ドキドキさせてもらっていると思う。
「玲奈さん、次何にしますか?」
「同じものを……」
「わかりました。つまみはいらないんですか?」
「今日は、このミックスナッツでいいわ」
左耳にピアス、薄いブルーの髪色のバーテン君が頷いて、背中を向けた。
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