大食いパーティー、ガーデンにて奮闘する
9皿目 霧の中のトルティーヤ
 それは、ハリスの家を訪ねてきた旧友の頼み事からはじまった。
 いつものようにガーデンでの冒険を終えて帰宅し、くつろいでいたある夜のこと。ノックの音が聞こえてハリスがドアを開けると、ハリスと同年代と思しき男性が立っていた。

「チャーリー! 久しぶりだな。急にどうした? とりあえず中に入れ」
 ハリスが破顔しながら出迎える。
 その様子から察するに、どうやら昔なじみのようだ。ソファに座り膝の上で丸くなるコハクを撫でていたリリアナは、立ち上がってお茶の用意を始めた。

「こいつはチャーリー。昔、パーティーを組んでいた仲間だ。そして、こっちがテオで、リリアナだ」
 リリアナが手際よくティーセットを並べ4人でテーブルを囲んで座ると、ハリスが互いのことを紹介する。

 一通りの挨拶を済ませて紅茶を一口飲んだチャーリーが、いきなり両手をテーブルについて深く頭を下げた。
 いったい何事かと驚くハリスたちに、チャーリーが切羽詰まったような声で告げる。
「ハリス、おまえに頼みがある。行方不明になった仲間の冒険者カード探しを手伝ってもらいたいんだ」

 チャーリーの話によれば、先日湿地帯エリアでパーティーメンバーのジョセフがはぐれてしまったらしい。
 湿地帯といえば、深い霧の立ち込める迷子が多発する難易度の高いエリアだ。
 チャーリーたちが湿地帯に行くのは初めてではなく、何度か訪れた経験があるため油断していたかもしれないとのこと。その日は【オオナマズの肝の収集】という依頼で湿地帯エリアに行き、拠点から沼を目指している途中でジョセフが姿を消したという。

 オオナマズの肝は滋養強壮と美肌効果が高く、これを原料としたサプリメントが貴族の婦人の間で流行の兆しをみせているらしい。
 リリアナはまだ湿地帯エリアに入ったことがない。オオナマズは凶暴な魔物ではないが、環境の悪条件が討伐の難易度を高めているという話だけは聞いている。

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