大食いパーティー、ガーデンにて奮闘する
「あらあ、テオさん顔色が悪いようですが、大丈夫ですか?」
 管理ギルドの受付係、エミリーがのんびりした口調でにっこり笑う。
 家事が壊滅的に出来ないことを誰かに相談してなんとかしようと思いついたテオだったが、あいにく友人がいない。
 顔見知りならいるが、過去にテオの言動が原因でいざこざが起き、険悪になった冒険者ばかりだ。
 そこで思いついたのがエミリーしかいなかったという訳だ。

「あのさ、こんなこと頼むのどうかと思うんだけど……」
 いつもの威勢の良さはどこへやら、頭をかきながら歯切れ悪くテオが切り出した時だった。
「お取込み中に申し訳ございません。緊急の依頼です!」
 ギルドの奥から別の係員が駆け寄ってきてエミリーにメモを渡す。
 それを見たエミリーはまた「あらあ」と呟いた。

「大変ですよテオさん。キングマンドラゴラが大暴れしているとの情報が入りました」
「はっ!?」
 キングとつくぐらいだから相当なデカさだろう。
「まさかテオさん、またあなたがやらかしたのでは?」
 エミリーが笑顔を引っ込めて疑いの眼差しをテオに向ける。
 テオは慌てて否定した。
「いやいやいや、俺知らねえし!」

 マンドラゴラといえば、3カ月前に初心者講習会でテオが軽率な行動をとったがために、ハリスに説教を受けたアレだ。
 しかもその後、1カ月間毎日畑を耕し続ける羽目になった。
 あらゆる可能性を想定して検証を重ねた結果、なぜたったの2週間であそこまでマンドラゴラが急成長したのか、その理由がわかった。
 テオのように力のある者が畑の土を深くまでしっかり耕すことと、カリュドールの血肉、発芽促進剤。この3つの条件が揃った状態で乾燥マンドラゴラの欠片を畑に蒔くと、マンドラゴラにとってはこれ以上ないぐらいに心地のいい状態になり成長が早まるのだ。
 
 ガーデン管理ギルドは理由がわかった時点でお触れを貼りだし、この組み合わせでマンドラゴラを育てることを禁止した。
 畑を耕し続けて懲り懲りしたテオは、もう二度とマンドラゴラと関わり合いになりたくないとすら思っているのだ。
 ということは、単純に運よく長年冒険者に狩られることなく生き延びているマンドラゴラなのかもしれない。

 とにかく断じて自分には関係ないと否定するテオに対し、エミリーも笑顔で頷く。
「嘘はついていらっしゃらないようなので信用します。でも討伐は手伝ってくださいね」

 そしてギルド近辺に居合わせた冒険者たちで緊急討伐隊が組まれ、皆でキングマンドラゴラの討伐に向かったのだった。
 
 
< 79 / 145 >

この作品をシェア

pagetop