大食いパーティー、ガーデンにて奮闘する
 キングマンドラゴラはテオの予想を遥かに上回る大きさだった。
 顔の位置はテオの目線よりも上にあり、頭頂部から生えている緑色の野菜に擬態している部分を合わせると、いまテオが暮らしているハリスの家の屋根ほどの高さがある。
 たしかにキングサイズだ。

 その巨大なマンドラゴラが触手を振り回し、草原エリアで暴れまわっている。
「なんだよ、あれ……」
「あらあ」
 呆然とキングマンドラゴラを見つめるテオの横にはエミリーもいる。
 エミリーは元冒険者だ。初心者講習会で助けてもらったため、彼女が相当な手練れであることは承知している。
 
「倒し甲斐がありそうだわぁ」
 嬉しそうに嫣然と笑ったエミリーがムチをピシィっと地面に打ち付け、キングマンドラゴラに向かっていく。
 そんなエミリーの背中を追いかけて駆け出したテオは、低木の陰でブルブル震えながらライフルを構えているガンナーの男がいることに気付いた。

 キングマンドラゴラと戦おうと思った勇気は称えるが、あんなに震えていたんじゃ(たま)が冒険者に当たってしまいそうだ。
「おまえ、なにやってんだよ」
「ひっ!!」
 背後から声をかけると男は肩をビクっと震わせて振り返り、テオに銃口を向ける。
「待て待て待て!」
 テオは慌てて手を大きく振り、自分が無害であることを示した。

「あのなあ、怖いなら無理に討伐に参加せずに帰れよ」
「いや……あの、実はあれ……僕のせいなんです」
「は?」
 男はジョージと名乗り、手短にキングマンドラゴラ誕生のいきさつを語った。

 ジョージが元いたパーティーのメンバーがマンドラゴラの成長促進禁止のお触れを見て、逆にやってみようじゃないかと言い出したらしい。
 そして2カ月前に草原エリアの一角でこっそり土を耕し禁断の3条件を揃えて試してみたのだが、2週間経っても頼りない小さな芽が出ているだけでうまくいかなかった。それを見て興味を失い、マンドラゴラを蒔いたことすら忘れていたらしい。
 ところがだ。今日パーティーで草原エリアを訪れてたまたまその場所を通りかかった時に、あり得ないぐらい巨大な緑色の葉が茂っていたという。
『これもしかして!?』
 メンバーのひとりの大声に反応して周辺の土がボコボコっと盛り上がり、キングマンドラゴラが飛び出してきたらしい。どうにか逃げ伸びたパーティーは、偶然見かけましたという(てい)でギルドにキングマンドラゴラが暴れていると報告だけして知らん顔を決め込んだ。
 ジョージはこれに異議を唱え、きちんと事実を報告してペナルティを受けた方がいいと主張したが聞き入れられず、あろうことかパーティーを追放されてしまったようだ。

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