優しく、ぎゅっと抱きしめて
「っ…悪い、寝ぼけてた」
そんな沈黙を破ったのは知賀くんの方。
「う、ううんっ…仕方ない…よ」
ぱっと腕を離して、私はベンチから下りる。
「…ほんとごめん」
知賀くんが流れるように頭を下げて謝るから、私はギョッとした。
「だから大丈夫だって…!ほら、顔上げて!ね?」
「でも……」
「何もこんなことで怒ったりしないよ。むしろ役得だったなぁなんて!」
って…待って待って?
私、今余計な一言言っちゃってない…?!
知賀くんがあまりにも落ち込んでるから、明るく振舞おうと思っただけなのに…。
自分が言ったことの恥ずかしに、徐々に頬が熱くなっていくのを感じる。
「……そうか。ならよかった」
………うん?
“ならよかった”……?