マグ

芝生の一本一本をセーターから摘んで取るなんて作業は、しようとも思わなかった私は、そのままの格好で帰宅した。


午後、三時頃の自宅には夏休み中の兄だけがいた。


「お帰り」


私が家の玄関のドアを開けた瞬間、リビングから兄の声がした。


何となく兄と顔を合わせたくなかった私は


「うん」とだけ言ってリビングには顔を出さずに、そのまま真直ぐに洗面所へ向った。



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