あなたの傷痕にキスを〜有能なホテル支配人は彼女とベビーを囲い込む〜
「でも、あそこ予約制だよ? 当日券、到着する頃には売り切れてると思う……」

 里穂が残念そうに言った。
 慎里までしゅんとうなだれている。

「ふ」

 頃はよしと慎吾は三枚の入場券をみせびらかした。
 里穂と慎里の目が丸くなる。

「プラチナチケット……どうしたの、それ?」
「俺もそれなりにコネがあるんでね」

 …… 隠岐CEOは『リュクス』『大人の憩い』をテーマにホテル作りを進めてきたが子供ができた途端、『赤ん坊がいる親がゆったりできるホテルを作る!』と宣言している。

 里穂と慎里を見つけた慎吾は、彩皇をオールバリアフリー及び親子主体のホテルにしようと新オーナーにCEOを介して提言。

 婚約者がいるオーナーは資金を提供すると約束してくれた。

 建物自体を一旦解体。
 ヘリポートを作るため、高層ホテルにする。

 ヘリによる騒音緩和のため、買収した周囲の土地にはイベント広場やアスレチックパークを内包する森林公園になる予定だ。

 完成に数年はかかる見通しであるが、彩皇は名前の通り子供の笑い声や家族の幸せな笑顔に彩られるようになるだろう。

 ――そこには里穂や慎里、自分の姿がある。

「慎里! よかったねえ、誕生日まで待たなくても行けるよー」

 はしゃいだ声が聞こえてきたので、慎吾は未来の構想から戻ってきた。
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