"ぶっきらぼうで笑わない女神"の恋愛事情
「おい、お前には真っ先にやらなければならないことがあるだろう」

「何?お兄さま」

「そんなこともわからないのか?お前がやらなければならないことは謝罪だ。彼女を突き飛ばし、危うく怪我をさせるところだった。しかも、彼女が大切にしていたものを傷つけた」

「だってそれは、その人」

「だって?ふざけるな!お前に弁明の余地などない。いいか、これ以上彼女に何かしてみろ。俺はお前を許さない」

「……」

「謝れないのか?」

「……」

「だったらそこを退け」

恭平は真琴の手を取った。指を絡ませ、恋人繋ぎといわれるものだ。ギュッと握りしめ、雪乃に近づく。

「退け」

地を這うような冷酷な一言だった。

恭平に気圧されたのか、雪乃は後退りする。

雪乃の前を通り過ぎる際、雪乃の顔を見やると歪んだ表情を浮かべていた。だがそれは、怒りではなく、深い悲しみからきているようだった。

正面エントランスを抜け、エレベーターに乗る。

恭平が深く溜息を吐いた。

「真琴、ごめんな」

悲愴な顔で謝る恭平の頬に両手をそっと添え、真琴は微笑む。

「恭平さんが守ってくれるから、私は大丈夫です」

「真琴……」

「恭平さん、ありがとうございます」

恭平の潤んだ琥珀色の瞳が真琴を見つめる。

「真琴、チューしていい?」

「ダメです」

「ちょっとだけ」

「ダメです」

恭平は拗ねたように頬を膨らませる。

「そんな顔してもダメなものはダメです。防犯カメラが見ています」

そう言ってはみたものの、内心ではにやけが止まらない。

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