"ぶっきらぼうで笑わない女神"の恋愛事情
「これ、全部真琴が作ったんだよな?」

「はい、お母さんのレシピ、早速活用しました。恭平さん、食べてみてください」

恭平はいつものように美しい所作でおこわを口に運んだ。ドキドキしながら恭平の顔を窺っていると、何度も頷きながら真琴を見やった。

「美味い!これは美味いぞ」

「本当に?」

「本当だ。絶品だぞ、これは」

真琴は胸を撫で下ろした。

「でも真琴、作るの辛くなかったか?」

「少し匂いが気になりましたけど、大丈夫です。恭平さんは、頑張らなくていいって言ってくれたけど、私、やっぱり傍にいるだけではなくて、恭平さんを支えたいです。恭平さんが健康でいてくれるように、食事の面でもしっかりサポートしたいです。頑張りすぎない程度に頑張りたいです」

「真琴……」

「でも……」

「ん?」

「私、最近集中力がなくて、得意な計算もミスしたり、課の人たちや会社に迷惑かけてしまってるなぁって、ちょっと落ち込み気味です。もう退職した方がいいのかなぁって考えたりもします」

テーブルを挟み、向かい合うように座っていた恭平が立ち上がり、真琴の横に腰掛けた。
椅子ごと真琴の身体を恭平に向かい合わせると、真琴の手を握った。

「真琴、仕事は続けたいか?」

「はい、つい最近まで定年までお世話になろうと思っていました」

「今は?」

定年までとはいいませんが、続けられるまで働きたいです」

「なぁ、真琴、忘れていることはないか?」

「忘れていること?」

「そうだ」

真琴は首を傾げた。

「うちの会社は、結婚出産後の女性の活躍はトップレベルの筈だ。何故だか真琴もわかっているだろう?」

そうだ!そうだった!妊婦への理解と配慮が高いことを忘れていた。

「お袋が泣くぞ」

「そうでした。忘れていました」

「くれぐれも、無理だけはしないように」

「はい」

恭平は大きな手で、真琴の頭を優しく撫で、温かい眼差しで、そっと抱きしめてくれた。
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