"ぶっきらぼうで笑わない女神"の恋愛事情
ん?この眼鏡の男性、どこかで見かけたことがある。どこだったか…… 思い出せない。

「何階ですか?」

不意に声をかけられ、ハッとした。
ボタンを確認すると、既に3階は押されている。

「3階です」

この人たちも3階で降りるのか……オセオンのイベント以外に何かあるのだろうか。
それにしても、背後から受ける圧が強い。
エレベーターの降下時間が妙に長く感じられる。息をするのも憚られるような空気だ。
真琴の視線は、階数を知らせる液晶画面をずっと捉えていた。

苦しい。早くこの空間から解放されたい。変な汗が滲む。

まもなく扉が開き、眼鏡の男性が真琴を先に降りるよう促してくれた。真琴は一礼し、エレベーターを降りる。
その場からできるだけ離れようと、気持ちだけが前へ前へ、足は空中を歩いているようなアンバランスのままなんとか大きな柱の影に身を隠した。大きく深呼吸をする。

あの空気はなんだったのだろう…

エレベーターに誰かが先に乗っていることなど珍しくない。ましてやスーツ姿のビジネスマンが乗っているなど会社では日常茶飯事だ。
なのにあの緊迫感。
真琴は初めての感覚に動揺を隠しきれなかった。
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