"ぶっきらぼうで笑わない女神"の恋愛事情
『逃げるんですか!』

『逃げる? いいえ、逃げるのではありません。大切な人を守るために、辞職したのです。
私はもう公人ではない。一国民であり、父親です。もし、大切な人を晒しものにし、傷つける者がいれば、私は容赦はしない』

『それは脅しではないですか!』

『脅し?大切な人を守るための発言が脅し?だったら、そう受け取ってもらって構いません。
私に向けられる非難、誹謗、中傷は全て受け止めます。しかし、妻はもちろん、大切な人や、子どもたちに牙を向き、害をなす者があれば、私は鬼になります』

その場が静まり、息を呑む音さえ聞こえる。
穏やかな口調ではあるが、鋭い眼光と揺るがない姿勢に、皆が圧倒されているようだ。

「何かご質問は?」

大佑の問いに、数人の記者が茉莉絵と直子についてどんな状況にあるのかといったデリカシーのかけらもない質問をしたが、大佑は毅然と突っぱねた。
次期総理大臣候補と言われた男は、記者からの質問が途切れるまで、逃げる事なく、終始堂々と構えていた。

そして、静かに表舞台から去って行った。

< 185 / 197 >

この作品をシェア

pagetop