"ぶっきらぼうで笑わない女神"の恋愛事情
いよいよだ。思わず身構える。 

『……』


『名は?』

これまでと同じ声のトーンで、皆と同じように名前を訊かれたけれど、これまでにはなかった微妙な間が、真琴の心を少しだけざわつかせた。

「真琴です」

『真琴、もし、お前の目の前にうずくまっている者がいるとしたら、お前はどうする?』

「え…」

思いもよらぬ質問に一瞬戸惑ったが、昔同じような場面に出くわしたことがあったことを思い出し、当時の記憶を辿りながらゆっくりと答えた。

「その人の傍に寄って、大丈夫ですかと声をかけます」

『明らかに体調が悪そうだったら?』

「背中を…背中をさすります」

『そうか、そういう場面に遭遇したことがあるのか?』

「はい、昔」

『その者はどうなった?』

「とても体調が悪そうでしたけど、背中をさすっていたら段々落ち着いてこられました」

『ならば、真琴の手が温かかったんだろうな。真琴に感謝していると思うぞ』

「そうでしょうか」

『ああ』

「そうだったら、とても嬉しいです」

『俺は、真琴が今日ここに足を運んでくれたことに感謝する』

「私の方こそ、ありがとうございました」

『真琴』オセオンの声が耳の奥でこだまする。
紅潮した頬を両手で押さえるも、オセオンと話ができたという事実にじわじわと胸が熱くなり、あっという間に熱が全身を覆った。
足にも力が入らない。天にも昇る気持ちとはこういうことなのかと、初めて味わう気持ちに高揚感が増していった。

それからというもの、最後の一人に行き着くまで、真琴の耳には何も入ってこなかった。
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