"ぶっきらぼうで笑わない女神"の恋愛事情
近づく心
TAKAMIDOホールディングスのオフィスフロアーで、真琴はパソコンに向かっている。綺麗に飾られたネイルは跡形もない。

真琴にとってはいつもの月曜ではあるが、社内はそうではなさそうだ。課長を含め、管理職の表情は硬く、緊張しているように見て取れる。一方、多くの女性社員は、心なしかメイクが濃く、服も洒落ていて落ち着きがない。

その理由は明白だ。新しく専務に就任した高御堂恭平(たかみどうきょうへい)33歳。

彼は先日までフランスに赴任していたが、副社長辞任に伴う取締役の編成が行われ、今回専務に就任し、戻ってくることになったのだ。

真琴が入社した時には既にフランス勤務だったため、会ったことはないし、顔も知らない。カメラ嫌いで、社内報にも掲載されたことがなく、知る術がないのだが、なんの興味もない真琴にとっては全く支障をきたさない。

旧帝大を首席で卒業するほどの知性を持ち、且つ端正な顔立ちとモデルのようなスタイル。けれど、仕事に対して一切妥協を許さないタイプらしく、彼を知る女性社員からは氷海のプリンスと呼ばれ、今では社内全体に浸透している。

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